銭湯が地域のメディアになる。−上野・浅草「日の出湯」田村祐一 × 松岡周吾

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上野・浅草にある銭湯「日の出湯」。新コーナー『ほっこりイズム』第一回は、こちらの銭湯にお邪魔しました。

今回うかがった田村さんは、「SAVE THE 銭湯」というウェブマガジンも運営されている、とても活動的な方でした。

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ほっこり村 松岡周吾(以下、松岡):ほっこり村の松岡です。今日は、どうぞよろしくお願いします。

 

日の出湯 田村祐一(以下、田村):初めまして。よろしくお願いします。

 

松岡:新しくて綺麗な銭湯ですね。日の出湯は、長く続いている銭湯なんですか?

 

田村:そうですね。僕で四代目です。建物自体は13年前に建てられています。でも、その前からここには銭湯があって、銭湯自体は僕で十二代目くらいじゃないかと。

 

松岡:じゅじゅ、十二代目ですか!?

 

田村:記録は全くないので、非公式記録ですけど(笑)

 

日の出湯の概要

DSC 0188 e1369672287107 682x1024 銭湯が地域のメディアになる。−上野・浅草「日の出湯」田村祐一 × 松岡周吾松岡:いきなりこんな話で恐縮ですが、今はだいたいどれくらいのお客さんが来られるんですか?あと、料金や営業時間、定休日などを教えてください。

 

田村:だいたい、一日で100人前後の方がお越しくださっています。
料金は大人450円、子ども180円、小学生以下は80円です。
営業時間は、15時〜24時です。最終受付は23時40分。毎週水曜日が定休日です。

 

松岡:へえ。日の出湯に入ったとき、煙突があって、木製で、という銭湯のイメージとは違って、お洒落な印象を受けました。

 

ところで、僕が日の出湯を知ったのは、田村さんの「SAVE THE 銭湯(※1)」を拝見したからなんですけど。
あれは、どういったきっかけで始めたんですか?

 

田村:銭湯って、だいたい週に1件くらいが廃業しているんです。年に50件ですね。東京だけの数字です。

 

松岡:すごい数ですね。

 

田村:まあ、斜陽産業と言えばその通りなんですけど。でも、それが「無くなっている」ことを知ってもらいたいということと、「まだ何かできるでしょ」という気持ちがあって。
だから、アドバイスをもらって、色々な業界の方に話を聞いてみようと思って始めました。

 

松岡:「SAVE THE 銭湯」を拝見すると、結構色々な業種の方にインタビューをされていますね。

 

田村:できるだけ、銭湯と関係のない業界の人に話しを聞こうと思っています。やっぱり、お風呂屋さんに聞くと、お風呂の話からは逸れないんです。だから、全く別視点からが良いんじゃないかな、と。だから、経営者やコンサルタント、デザイナーの方にお話をお聞きしてます。

 

松岡:異業種だから新しいアイデアが生まれたりするんですね。「今度から使ってみよう」というアイデアとか、出たりするんですか?

 

田村:結構あります。例えば、「Kindle(※2)を持ち込んで、風呂で本を読めたら良いよね」という話をしたことがあって。紙の書籍を持ち込むと、シワシワになってしまうので。

 

松岡:Kindleはお風呂に入れても大丈夫なんですか(笑)?

 

田村:どうなんですかね(笑)まあ、防水パックとかがあったりするので。

 

松岡:僕、子どもの頃、お風呂にテレビが付いていれば夢みたいだな、ってずっと思ってたんです。

 

田村:そういうことですよね。のぼせちゃいますけど(笑)

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銭湯が地域のメディアになる

 

田村:あとアイデアとして生まれたのは、銭湯を「地域のメディアにする」とか。

 

松岡:地域のメディアというのは、銭湯自体がコミュニティの機能を果たすということですか?

 

田村:銭湯は、やっぱり人がたくさん訪れる場所なので、「情報発信源になる」ということです。例えば、近所に引っ越してきた人が日の出湯に来て、「近所の美味しいご飯屋さん」とか、そういう情報を仕入れて帰っていく。

 

松岡:その情報やコミュニケーションの中心に、銭湯があると。

 

田村:まあ、銭湯じゃなくても良いんですけど。バーでもカフェでも。そういった地域に根ざしたお店が、地域のメディアになれば良いんじゃないかな。

 

松岡:それはすごく面白いアイデアですね。

 

田村:最初に銭湯に行くきっかけになれれば良いですね。銭湯に来れば、地域の方々と交流ができて..、という。

 

松岡:「地域デビュー」ってやつですね。でも日の出湯は、初見でも入りやすい印象を受けました。

 

田村:「一見さんお断り」的な雰囲気は出ていないと思います。銭湯のなかで初めて仲良くなって、外に出て行くこともあるんじゃないのかな。

 

松岡:銭湯でそんな出会いがあると、来るのが楽しみになりますね。「ただお風呂に入りにくる」だけじゃない付加価値が、銭湯にはあるような気がします。

 

田村:そうですね。お湯に浸かるだけだったら、家でもいいわけですから。

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今後の展開

 

松岡:あと、今と同じような話題になってしまうかもしれませんが、銭湯や「SAVE THE 銭湯」の活動の今後の課題や展開については、どのようにお考えですか?

 

田村:「SAVE THE 銭湯」に関しては、もっと多くの人に読んでもらうことが課題です。
銭湯に関しては、やっぱり「経営を成り立たせながら、いかにゆったりとしたお風呂を作るか」ですよね。

 

松岡:難しいですよね、それも。

 

田村:ただ、他の銭湯をライバル関係にあるかって言ったら、決してそういうわけではなくて。やっぱり地元のお客さんがメインなので。競争にならないから、発展しないのかな、とも思いますけど。

 

松岡:他と競合していないからこそ提供できる、ゆったりしたサービスがあったり。

 

田村:そうですね。日の出湯の近所のお風呂屋さんは、露天風呂とかあって、すごいんですよ。一日500人くらい来る。それも銭湯のひとつのパターンだと思います。

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■「居心地のいい」場所をつくる

 

松岡:活動に対する思いやコンセプトって、なにかあったりしますか?お風呂と、あるいは「SAVE THE 銭湯」についてでも良いんですけど。

 

田村:「SAVE THE 銭湯」に関して言えば、できるだけ多業種の方に、できるだけ別視点で、どう感じるのか、どうなったら面白いのかということをコンセプトに据えてやっています。

 

銭湯に関して言えば、「お客さんをたくさん入れれば良い」と思っているわけではないんです。日の出湯は小さな銭湯なので、繁盛し過ぎると、お客さんの居心地が悪くなってしまうんですよ。だから、いかに居心地の悪さを起こさないか。とても難しい課題なんですけど。いかにゆったり入れるか、ですかね。

 

松岡:いかに「ほっこり」してもらうか、ですよね。結構いま、商業的なでっかいお風呂屋さんだと、無駄にキャンペーンとかやって、「客を詰め込めるだけ詰め込む」という経営戦略が目立つじゃないですか。もちろんこれは、お風呂屋さんに限らずですけれど。
田村さんは、ある意味でその逆を行っているというか。

 

田村:人がいっぱい入っていると落ち着かないじゃないですか。

 

松岡:裸で詰め込まれても、気持ち悪いだけですもんね(笑)量より質、といったところでしょうか。
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「ほっこり」するために必要なモノは?

 

松岡:それでは、最後の質問になります。いつも、「”ほっこり” するために必要なモノは?」という質問をお聴きしているのですが。その黒板に書いて頂けますでしょうか。

 

田村:はい。ほっこりするために必要なモノは、「大きいお風呂」です。「銭湯」って書いた方が良いんですかね。ほっこりするためには、これがやっぱり必要です。

 

松岡:素晴らしいです。僕も、ほっこりしたいときには、ぜひ日の出湯さんにお邪魔したいと思います。
本日は、お忙しいなか、どうもありがとうございました!

 

田村:ありがとうございました。

(2013年6月・東京上野『日の出湯』にて)

編集後記

田村さん、お風呂の仕込みがあったにも関わらず、丁寧に銭湯について話してくださいました。

「ほっこり」をキーワードに、色々な分野の方に松岡が会いにいくこの企画。

「大きなお風呂」は、まさに第一回にふさわしいアイテムだったのではないでしょうか。

もっと突っ込んだ話や、銭湯業界のことについても、もっと詳しく聴ければ良かった。

それは、またの機会ということで、次回もぜひご覧ください!


田村祐一(たむら●ゆういち)
1980年12月生まれの32歳。東京蒲田にある大田黒湯温泉第二日の出湯の四代目、銭湯の跡取りとして生まれ育つ。
大学卒業後、家業である有限会社日の出湯に就職。26歳の時に取締役に就任。
2012年5月より創業の地である浅草日の出湯のマネージャーとして銭湯経営再建に着手。


※1  銭湯の新しい価値を模索するウェブマガジン。
※2  ショッピングサイトのAmazonが販売している電子書籍端末。